芋名月

名月は雲間を照らす

  朔(新月)から数えて十五番目の夜が満月とは限らない。今宵は満月ひとつ前の小望月。より正確を期すなら明日の13:33頃が満月ピークなので、明晩の月の出あたりが最も丸い月となる。

 何年かぶりで東を昇る名月を撮ろうと朝から仕事車に機材を積んで出かけたが、帰宅時間は雲に閉ざされ空振りとなってしまった。雲間越しながらお月見が可能となったのは20時頃のこと。結局はいつものように自宅ベランダからの撮影。

 なんだか面白みに欠けるけど、月と雲の妙は運次第。それに名月が名月たり得るのは地平の風景と組み合わせてこそとも思える。来月の十三夜(栗名月)で捲土重来といきたいところだ。

f:id:Tpong:20190913215444j:plain

 雲がある限りは遍く照らしはしないけど、未だライフラインの不自由を強いられている台風被災地域には月明かりが届いているのだろうか。ヒゲボウズの職域でも復旧に絡んだ動きが始まった。要請があるかどうかは判らないが、気持ちの準備だけはしておこう。

久々の台風に右往左往

台風15号接近

 家族の送迎にクルマを出そうとしたところ、突然の日照り雨。台風前にキツネのお嬢さんは嫁に行くのかなどと馬鹿なことを考えていたら、一瞬の後にはバケツをひっくり返したような土砂降りとなった。せいぜい10分程のことだったが、台風からの風に押された積乱雲が通過したようだ。

 繁華街を覗いてみると、予報を見たとは思えぬ軽装が目立つ。関東直撃なら久々だと思うのだが、相変わらず首都圏の人々は天象を軽んじている節がある。日没後、隣接区域では避難勧告が出ている中で花火を打ち上げているし、正直訳が分からない。

f:id:Tpong:20190908231506j:plain

 雨の降り始め。面白い光景だったのでiPhoneでパシャリ。この辺りのピントの深さは絶妙だ。と思ったのも束の間、土砂降りとなったのは前述通り。


 今夜は風雨の音が寝物語となりそうだ。願わくは被害のない朝でありますように。


Instagramの野鳥写真

 始めてみて判ったのはポストされた日本の野鳥写真、その過半数カワセミだということ。海外の野鳥写真でもカワセミの仲間は一定以上の人気があるようだが、日本のそれは異常に映る。最初はあまり意識することなく同好の野鳥写真をポストする方々をフォローしていたのだが、Instagramを開く度にいつか見たことがあるようなカワセミカットばかり表示されてしまう。食傷気味とはこのことかもしれない。 

追記(9/9):一種類の鳥を大勢の人が撮れば、場所や時間が違っていても自ずと似通った写真が生まれてしまうという意味で記している。コメント欄でも触れたが、Instagramでのタグ検索、#野鳥 90万件 に対し #カワセミ 16.3万件 カワセミへの異常なほどの偏りを現していると考えられる。個々人ではなく日本の「野鳥写真愛好者」総体の傾向としてカワセミへの偏向ぶりがヒゲボウズの食傷を引き起こしている。

チョウゲンボウのアーバンライフ

チョウゲンボウ(長元坊)

ハヤブサハヤブサ科】

 周囲の勧めもあり、少し前からInstagramを始めている。

 当ブログとシンクロ出来ればよいのだが、実際は過去ログから漁ることがほとんど。多少は変化を付けたいと過去画像をHDから浚うことになるのだが、今日の二枚は当時Hatenaダイヤリーで撮影直後の掲載から省いた没カット。改めて見直すと、こちらの方が良かったかもなどと思ったりしている。

f:id:Tpong:20190905222330j:plain

 高速道路の高架入路に造っていた巣。撮影当時は巣材を運ぶ様子も見られたのだが、結局は放棄した。

 本来チョウゲンボウは断崖の岩棚や横穴、樹洞などで営巣するのだが、ビルや高架橋なども人の気配が希薄であれば違和感なく営巣するようだ。このあたりは同族のハヤブサでも同様の傾向があるようだ。都会のビル群を鳥の視点で眺めれば、断崖絶壁と変わりが無いのかもしれない。

f:id:Tpong:20190905222338j:plain

 この飛び出しシーン、当時使っていたカメラでよく撮れたものだ。オートフォーカスの追従など望むべくもないので、飛び出しコースを予測しての「置きピン」だったと思われる。機材が古い分だけ苦戦もするが、不肖ヒゲボウズの一眼レフデビューはオートフォーカスどころか自動露出さえ夢物語だった時代。それを思えば機材への不満など ・・・・ 

    ・・・・ 嘘です。やっぱり最新機種には惹かれまする。

 

- 撮影データ:Canon EOS 20D / Canon EF400mm F5.6L USM

チョウゲンボウ(長元坊) の過去記事を読む

コジュケイは寄るな来るなでチョットコイ

 利き腕の不調で鳥見から遠ざかっているので、例によってハードディスクを浚って画像を発掘。画像は初出だが、記事内容は過去にも触れたことが含まれている。ご容赦のほどを。

コジュケイ(小綬鶏)

【キジ目キジ科】

 本来の生息地は中国南部。日本にはペットもしくは狩猟用として100年前に移入されたのだが、我が神奈川県ではまったくの普通種。「チョットコイ」と聞こえる鳴き声も馴染み深く、もはや帰化種と知らない人も多いのではないだろうか。

f:id:Tpong:20190828214826j:plain

 上はオスの画像。脚部中程の後方に僅かに見える距(ケヅメ)がその根拠。距はニワトリなどキジ科のオスの特徴だが、本種のそれは小さくて見分け難いので、不肖ヒゲボウズなど撮影した画像をチェックして距を見つけるのが関の山。

f:id:Tpong:20190828214815j:plain

 このときも雌雄特定は事後処理中のPCモニターだったのだが、これまでに特定できた数組のペアを見る限り、全体にオスの方が柄にメリハリがあり首周辺のレンガ色も濃いように思える。向かって左がオスなのだが、お分かりいただけるだろうか。とは言えこの程度の差異は個体差と言われればそれまで。あくまでもヒゲボウズの私見であることをお断りしておく。

f:id:Tpong:20190828214821j:plain

 このシーンを見つけたときは巣穴かとも思ったのだが、コジュケイの巣は草むらの窪みに草などを敷いた形状のはず。様子を見ていると時折土埃が上がっていたので、沐浴(砂浴び)だったことが判明。入浴も一緒だなんて、どこまでも仲のよいカップルであることよ。

 

コジュケイ(小綬鶏) の過去記事を読む

- 撮影データ:Canon EOS 5D / Canon EF400mm F5.6L USM

隣はなにをする人ぞ

夏の終章

  朝からまとわりつくような湿った空気。時折降る雨が鬱陶しさに拍車をかける、「残暑」を絵に描いたような一日。と思っていたのだが、西陽とともに雲がちぎれ何やら秋めいたそよ風が吹いてきた。どれだけ暑さに喘ごうが、季節は歩み続けていたらしい。 昼間の暴力的な蝉時雨に大差は無いが、夜の虫の音には涼やかな気配が混じりはじめている。

 残すところ一週間の8月だけど、あくる9月が即ち秋にはなるはずもない。台風の幾つかが通り過ぎるのは必至だが、願わくば災害のない初秋であってほしいものだ。

f:id:Tpong:20190823212222j:plain

 仕事を終え、さあ帰宅というところでこの空に遭遇。とりあえずiPhoneを空に向けてみた。意外に撮れるものだとはヒゲボウズの偏見もしくは認識不足。加齢とともに偏屈街道まっしぐらだな。

 

都合の良い悲劇

  歴史認識といえばたいそうな話だが、某新聞社が書いた下書きに色を塗っただけの勧善懲悪C級小説じゃないかと考えてしまう。攻められた側に立てば始皇帝やチンギスハーンは悪魔だろうが、彼らにも「理」があったからこそ英雄という見方もあるわけだ。

 歴史のうねりに善悪二極の単純構造など無いと思うのだが、「都合のよい悲劇」の前には声も届かない。

不快な夜は月もが禍々しい

居待月

  近所のラーメン屋さんからの帰り道、東の地平を真っ赤な月が昇ってきた。
帰宅後のベランダで、大気の揺らぎが落ち着く頃合いにフィールドスコープをセット。
赤味こそかなり薄れたが、まだまだ禍々しい色を湛えた月が低空を睥睨していた。

f:id:Tpong:20190818214130j:plain

 デジカメのホワイトバランスをデイライト設定として見た目通りのオレンジ色で撮った後、電球設定(3200k)に変更して色の偏りを修正。極軸の傾きも補正して撮ってみた。

f:id:Tpong:20190818221749j:plain

▲ 2019/08/18 21:20:35(月齢17.350)

 おおよそ本来の色が限りなく無彩色なのは「かぐや」などの観測データでも証明されている。このブログでは何度か言及してきたが、禍々しい色の正体は地球の大気が波長の短い光を散乱させてしまうことによる。

 と理屈は判っていても、ねっとりと淀んだ不快な空気は禍々しさをいや増しているようだ。いい加減、猛暑にもウンザリしてきた。

- 撮影データ:Canon PowerShot G9 X Mark II / Kowa TSN-824M + TSE-14WE(32x)

明治の大義と令和の正気

記念艦「三笠」(HIJMS MIKASA)

 横須賀に「三笠」を訪ねてきた。
司馬遼太郎の小説「坂の上の雲」を読んで以来、いつかはと思いつつ今日になってしまった。名目上は記念艦だが氷川丸のように浮いているわけではなく、陸上に固定された状態で横須賀市三笠公園の一角を占めている。

f:id:Tpong:20190814195856j:plain

 三笠を旗艦とした連合艦隊がロシアのバルチック艦隊*1と交戦し勝利したのは1905年(明治38年)。この日本海海戦は日本の海軍史上で最も輝かしい成果だが、国家の枠を超え海外の海軍関係者が研究し賞賛する海戦でもあるようだ。

 不肖ヒゲボウズは1980年代の南米チリで、当地の大学生たちから日本海海戦について熱く語られたことがある。のみならずかの国で最も名の知れた日本人が東郷平八郎*2だという事実に驚いたことを覚えている。

 第二次世界大戦の敗戦後、荒廃した記念艦三笠を救い再建するきっかけはむしろ英米側だったそうだ。敗戦直後の状況を考えると意外にも思えるが、それだけこの艦が世界史に名を留めているということなのだろう。建造したのが英国だということも大きいとは思うが。*3

f:id:Tpong:20190814195901j:plain

 記念艦「三笠」は日露戦争に特化した博物館でもある。「坂の上の雲」読者としては随所に明治という時代の輝きが見て取れる。なによりもその後に続く凶暴なだけの戦争とは異なる「余裕」や「文化」を感じるのが面白かった。暑かったけど・・・・ 

- 撮影データ:Canon EOS 6D Mark II / Canon EF 17-40mm F4L USM

坂の上の雲 全8巻セット (新装版) (文春文庫)

坂の上の雲 全8巻セット (新装版) (文春文庫)

 

 

  出来うるなら、某隣国の皆さんにはロシアの脅威にさらされた近代アジア史を脚色フィルター無しに知ってほしいものだ。そのときのお国の事情を知れば違った事実も見えてくるのだが、国家的歪曲の前には無力だなぁ。

 

 記念艦「三笠」公式サイト>http://www.kinenkan-mikasa.or.jp/

 

 ガングリオンってSFアニメじゃないよ

  一年ほど前から左足親指付け根が膨らみ、本人のみならず外反母趾と思い込んでいた。右腕の痺れ治療に通う整形外科で見てもらったところガングリオン(ジェル状の物質の詰まった腫瘤)と判明。注射器で吸い出してあっという間に処置完了。針を刺すときは痛かったけど、こんなことなら早く受診すべきだった。女性に多いらしが、男とて珍しくは無い症例だそうな。

 このところ身体の故障が相次いでいるので、ある意味久しぶりの朗報だった。

*1:ロシア第二・第三太平洋艦隊の日本側呼称 旅順港に封じられた太平洋艦隊を増援するため編成された

*2:日露戦争当時の連合艦隊司令長官

*3:造艦技術が発達途上のこの時代、主力艦クラスの建造はイギリスなど造船先進国に頼っていた