若ツバメ風雨を突く

 柳の下のドジョウではないけれど、先週のオシドリらしきカモが気になって小雨けぶる水田を探し歩いた。カルガモはたくさんいたけれど、件のカモは見つからず。小柄なだけにこの一週間で伸びた稲に隠れて見落とした可能性もあるけれど、オシドリが本来過ごすべき山地へと去って行ったのかも知れない。いや、むしろそうであって欲しいとも思うのだった。

ツバメ(燕)幼鳥

【スズメ目ツバメ科】

 背丈を増した稲の上空、小雨混じりの風に十数羽のツバメが群舞していた。何事かと双眼鏡で追ってみると、その大半は最近巣立った若いツバメたち。急旋回したり空中静止してみたり、中には明らかに追いかけっこをしている個体もいて餌捕りというよりは飛行訓練の様相。

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 農道に止めたクルマからレンズを突き出しての撮影。風雨を凌ぐ意味もあるけれど、派手なレインウェアより警戒されないメリットがある。縮小画像のままでは判じかねるが、ポツポツとノイズのように見える小さな白点は1/8000秒で静止した雨粒。5羽が同時にフレームに収まるなど、このシャッター速度ありきの偶然か。

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 尾の長いことからオスと思われる個体だが、成鳥に比べると翼の色が薄いし顔の赤みも鈍い。クチバシの基部にヒナの名残が見えている。

 彼らの群舞を追いながら、この中の何羽が来春戻ってこれるのだろうかという思いに駆られる。この時季に巣立った若ツバメたちは初秋の渡りまで十分時間があり、2度目(7~8月)の繁殖から巣立つツバメたちに比べると有利なように思える。それでも試練であることには変わりないのだが。

- 撮影データ:Canon EOS 7D / Canon EF400mm F5.6L USM

追記(7/11):画像のRAW現像設定の彩度調整が高すぎて、背景の緑が不自然だったのを調整して再掲。

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WHO ARE YOU?

オシドリ(鴛鴦) 交雑? ♂エクリプス

【カモ目カモ科】

 山階鳥類研究所よりオシドリ♂のエクリプスとご教示いただきました。交雑云々は不肖ヒゲボウズの勇み足だったので訂正させていただきます。図鑑で見るエクリプスは総じてメスに似ているので、繁殖羽からエクリプスへの過渡期と考えるのが正しいようです。ただ、怪我の様子もないことからなぜこの時季に平地の水田にいたのかという疑問は残りました。(7/11)

  小雨降るいつもの田んぼ。双眼鏡の視界に捉えたと同時に頭の中は「Who are you?」の疑問符だらけ。カモらしいことはわかるのだが、頭部の橙色模様に見覚えがない。台風で迷行した国外種かなどとあらぬ妄想を膨らませているうちに飛び去ってしまった。

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 三脚に据えたデジスコを担ぎ、気分はダッシュ、現実にはヨタヨタと飛び去った方向を追う。ゼイゼイと息を切らせつつ見届けた着地地点にスコープを向けてみると、カルガモの隣で全身をさらしてくれた。

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 後ろのカルガモと比べると二回りほど小さくコガモほどのサイズのようだ。頭部の模様やクチバシの形状にはオシドリ♂の面影が見て取れる。翼鏡という光沢質の部分や足の色などはカルガモの影響を思わせるし、なによりもカルガモと行動しているように見受けられる。本人(本鳥)はカルガモと自覚しているのだろうし、周りのカルガモも拒む様子はなかった。

 鳥類の中でもカモの仲間は交雑が多いことで知られている。事実我が家周辺のカルガモはかなりの確率でマガモの血が混じっているいわゆる「マルガモ*1」だし、ネットや図鑑にも交雑カモの情報が数多ある。 のだが・・・・オシドリカルガモはその事例を見た記憶がない。 本当のところは専門家に判断を仰ぐしかないのだが、カルガモオシドリの交雑である可能性が高そうだ。

 バードウオッチングの好適地でもなければ有名な探鳥スポットでもない平凡な田んぼだが、訪れる都度に何かしらの発見がある。やはり歩いてナンボだなぁ。

- 撮影データ:Canon PowerShot G9 X Mark II / Kowa TSN-824M + TSE-14WE(32x)

追記(7/4):

 可能性のひとつとして、オシドリ♂の繁殖羽からエクリプスへの換羽中画像を検索してみた。意外に多くの画像がヒットする。

 カモ類のエクリプスとは、非求愛・繁殖期に目を惹く夏羽(繁殖羽)から目立ちにくい羽衣に換羽した状態のこと。多くの場合メスに似た地味な羽衣となる。その換羽の過渡期ならばと考えたのだが、はっきりと該当しそうな画像を見つけることは出来なかった。

 さらに、当初の見識不足に気が付いた。カルガモ的だと考えていた翼鏡と脚の色だが、脚の色はオシドリの特徴でもあるようだ。交雑と仮定してもカルガモは疑わしい。カルガモと行動していたことからの先入観に囚われてしまったと反省。 そんなわけで、当初のタイトルからカルガモを外した。

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 体の中心部(脇もしくは上雨覆)に細かい白黒斑模様が確認できるのだが、コガモマガモオナガガモヨシガモオカヨシガモヒドリガモトモエガモなど多くの種類のオスで一般的な繁殖羽なので、オシドリ以外の交雑相手を絞り込む材料にはならない。

 時季的には繁殖羽からエクリプスへの過渡期と考えるのが無難だろうが、そもそもオシドリがいるはずのない場所だけに悩ましい。そして羽衣の特徴など交雑を疑う要素も捨てきれない。

 ここ数日ほど無い頭を絞って考え続けたが、なんちゃってバードウオッチャーの手に負えるものではなさそうだ。

*1:マガモカルガモによる非公式な造語orスラング

田んぼで子供が喧嘩する

ハクセキレイ(白鶺鴒)幼鳥のバトル

 【スズメ目セキレイ科】

 騒ぎに気づいたときは少しばかり距離があり、親鳥が幼鳥を追い払う「子別れ」かと思った。そっと距離を詰める間も戦い続ける両者。ファインダーで捉えてみたら2羽とも幼鳥じゃないか。

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 周囲には成鳥も含め数羽のハクセキレイがいたし、縄張りを争うにしては不自然に見えた。はたして本気の喧嘩なのだろうか。

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 この空中戦の後はひたすらの追いかけっこ。案外遊びを兼ねた訓練なのかも知れない。 

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 いやはやバトルさえもが息を呑む。

普通種すぎて忘れていたよ、ハクセキレイが美しい鳥だということを。

- 撮影データ:Canon EOS 7D / Canon EF400mm F5.6L USM

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狩りからの帰還

 「撮月見月」じゃないかとの声が聞こえてきそうな更新状況。野鳥撮影は早くも滞り、ハードディスクから過去同時季の画像を蔵出しする羽目に陥っている。盛夏に向かって夏枯れ必至なのに、前途多難なことだ。


チョウゲンボウ(長元坊)♀

 【ハヤブサハヤブサ科】

 スズメとおぼしき獲物を掴み、腹を空かせた幼鳥の元へと帰ってきた。

 この親鳥の狩りは成功率が高く、2時間ほどの観察中4回も獲物を運んできた。内訳は2回がスズメらしき小鳥で、あとはバッタあるいはカマキリのよう。

 実はこのときまでチョウゲンボウはあまり小鳥を狩らないと考えていたのだが、そんな先入観を一蹴されたことを思い出す。さすがはハヤブサの眷属。

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 飛翔シーンを撮る場合、背景が煩雑だとカメラのオートフォーカス(AF)が被写体に追従出来ずピンぼけを量産してしまうことが多い。このときは咄嗟のマニュアルフォーカス(MF)でしのいだが、それは遅延のない一眼レフの光学ファインダーと瞬時のMF優先(フルタイムマニュアルフォーカス)が可能なレンズの恩恵だとも思っている。

 はたしてレンズ交換式カメラの趨勢となりつつあるミラーレス機の電子ビューファインダーでどこまでそれが可能なのか、機材重量が堪えはじめたヒゲボウズ爺は気になって仕方がない。

 

- 撮影データ:Canon EOS 7D / Canon EF400mm F5.6L USM

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月に吠える

梅雨望月(月齢14.061)

  近頃世間ではストロベリームーンと言うらしいけど、アホくさいなぁ・・・・

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  ホワイトバランスを「晴天」に設定。確かに月出直後はこんな色に見えた。だが赤や黄色に見えるのはあくまでも地球の大気による着色現象、いやむしろ脱色現象と言うべきか。実際の月面はほとんどモノトーンの世界。

 参考:鳥撮機材で天体撮影

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 雲越しの月が好きなのは今に始まったことではないけれど、なかなか上達しない。肉眼で見た印象はもっと荘厳だ。

- 撮影データ<上>:Canon PowerShot G9 X Mark II / Kowa TSN-824M + TSE-14WE(32x)

- 撮影データ<下>:Canon EOS 7D / Canon EF400mm F5.6L USM

Fly Me To The Moon

小望月夜

  木星リベンジでベランダに機材をセットしたものの、大気の揺らぎは6/11の「衝」以来最悪のコンディション。あきらめて月撮りに切り替えた。 満月前夜、ユーミン歌うところの「14番目の月」というアレである。

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 撤収作業に取りかかったところで月と交差しそうな航空灯を発見。大慌てでカメラを再セットし、かろうじて間に合った。もう少しだけ下を通過してくれたらとか、テレコン装着する間があればとかの思いは残るが、滅多にない偶然には感謝こそあれ文句は言えぬ。

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 上昇角や高度からして羽田を発った国内線なのは間違いない。シルエットから機種の特定を試みた。B-777ではなかろうかと思うのだが、さすがに確信には至らなかった。

-撮影データ:Canon EOS 7D / Canon EF400mm F5.6L USM

雨の夜は音の惑星旅行へ

木星(Jupiter)

  6月11日の「衝」以後最初の晴天夜6月13日に撮影した木星をコンポジット処理。

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 当夜は風が強く大気はユラユラ。百余枚撮ったなかでコンポジットの元となり得るカットは8枚しかなかった。

 納得するには到底及ばない結果に、今月中に穏やかな晴天夜があることを願うばかりだ。


土星(Saturn)

  木星が南中する頃、東南の低い空には土星が光を放っていた。

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 木星よりさらに高度が低く、大気の影響も酷いものだった。

 土星の「衝」は7月10日。当分は晴れてくれさえしたなら木星土星にスコープを向けよう。

- 撮影データ:Canon PowerShot G9 X Mark II / Kowa TSN-824M + TSE-9W(50x)

 

ホルスト 組曲「惑星」

 指揮者やオーケストラに拘るほど耳は肥えていないが、数あるクラシック楽曲の中でもとりわけ好んで聴いているのが組曲「惑星」。

   この楽曲を知ったのはオリジナルより冨田勲のシンセサーザーが先。音楽的な素養のない高校生のヒゲボウズにとっては衝撃的な出逢いだった。

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 ポップス化された木星(Jupiter)ばかりが有名だが、オリジナルであれ、富田版であれ、組曲を通して聴くことで太陽系を旅する高揚感が味わえる。