動物園の仕事

長崎県対馬だけに生息する国の天然記念物ツシマヤマネコについて、人工繁殖で100匹を育てることを目指し、環境省は29日、九州だけで実施している人工繁殖を関東でも行う「分散繁殖」に取り組むと発表した。

 自然に帰す目的の繁殖計画なので、一切の人目は避けねばならないはず。おそらく飼育係さえヤマネコに身を晒すことはないでしょう。興行的には全くメリットのない事業です。であるが故にこうした取り組みを行っている動物園はたとえ環境省の主導であっても側面援護してあげたいな。

 さて、仮に繁殖計画が軌道に乗って、ある程度野性に返せる目途が立ったとします。そのときヤマネコたちが帰って行く対馬の環境はそれだけの個体数増加を受けとめることが出来るのでしょうか。開発に歯止めがかからず個体数が減少していく現実の前には一時的なテコ入れで終わりかねない懸念がつきまといます。そうならないためにも環境省は繁殖計画と平行して生息環境の「復旧」を図ることが急務のはず。果たして具体性を持ったプランが進行しているのかどうか、このプロジェクトが片手落ちではないことを切に期待します。