雲上の金環日食

 我が家周辺は金環ゾーンのほとんど真ん中。が、天気は南の沿岸部から崩れはじめているらしい。地元に留まるか少しでも北上するか、天気図とにらめっこしながらギリギリまで迷う。
 迷ったあげく地元の農道でセッティングを完了したのが日食が始まる15分前。この時点で東から南にかけては既に雲に閉ざされていた。南西方向にのぞく晴れ間が恨めしい。
 欠け始めたはずの6:20頃、全ては厚雲の彼方で進行していた。そして迎えた7時頃、あろう事か雨さえ降ってくる始末。これは無理かと諦めかけた07:17:46、僅かな薄雲越しに食分70%ほどの太陽がうっすらと顔を出す。レインカバーをはねのけて大慌てでマニュアルフォーカスとスポット測光。最初はピントを追い込み切れていないなぁ。ともかく35mm換算1280mm相当で自由雲台は辛い。刻々と上昇していく太陽を追尾するのに苦労した。

そこからは気まぐれ雲に翻弄されながら途切れ途切れの観測が続く。
そして07:31:30、金環日食のゾーンに突入。造形的には完全な金環より好ましいな。
ふと我に返り周囲を見れば、それと分かるほどに薄暗くなっていた。

ど真ん中の金環ストライクゾーンは雲に阻まれ、07:33:25のカットが撮れた中では43秒前のカットがピーク最近となった。いつの間にか増えていたギャラリーから歓声があがる。

途切れがちな観測だったが、雨さえ降ったことを思えば見られただけでも良しとしよう。
07:39に撮ったこのカットが今朝の空を象徴しているようだ。

 肝心の撮影機材だが、十分に用意を整えたつもりのデジスコは刻一刻と変化する雲の厚みに対応できなかった。結局は速写性とダイナミックレンジに勝るデジタル一眼レフの出番となり、400mmレンズに2xテレコン装着で終始した。
 さらに減光用に用意した太陽撮影用フィルター(marumi DHG ND-100000)は曇天では暗すぎて無用の長物。風景用に常備している-3EVのND8フィルターを取り付けて、減光しきれない分は絞り込むことで対応した。慌ててしまい、ISOを上げすぎた場面もあったが、なんとかアドリブで乗り切ったかな。それにしても事前に繰り返したテスト撮影はほとんど無駄になっちゃった。あぁ、太平洋上の低気圧が恨めしい。

撮影データ :Canon EOS 20D + Canon EF400mmF5.6L USM + 2Xテレコン(Canon ExtenderEF2xII) + ND-8 / 2012年5月21日 横浜市青葉区

 尚、文中の時刻は使用カメラの時間設定を撮影後に校正し、Exif情報から-30秒で表記。また画像サイズは各コマのセンターを揃えるために2割ほどトリミング(3504x2336 > 2800x1866)した画像を960x640にリサイズしている。