黄鶺鴒(キセキレイ)

【スズメ目セキレイ科】
何十年も昔、今や髭坊主なオッさんが紅顔の美少年だった頃の話。(嘘です、念のため)
今や日本中を席巻しているのはハクセキレイだが、70年代頃は分布の南限が東北地方南部だった。
その頃セキレイといえば、もっぱらセグロセキレイキセキレイのことだったのだ。

登下校路脇に粗大ゴミだらけの池があった。
初夏の下校時、水中に潜んでいたらしいヘビが池畔の石上に佇むキセキレイを襲うシーンに遭遇した。
ヘビは赤っぽく見えた印象があるので、おそらくはヤマカガシだったのだろう。
鮮烈だったのは尾羽を振るだけの静止状態から瞬時にジャンプし、襲撃をかわしたキセキレイの見事な身のこなし。

千葉周作北辰一刀流では、星眼*1に構えた切っ先を「鶺鴒の尾の如く」振ると教える。
次の動作を素早く行い、繰り出す攻撃の手を相手に読ませないための工夫だそうだ。
現代の剣道でも相対した剣士同士が正眼に構えた切っ先を上下に振って間合いを計り、そして誘いあう。
あのとき目にしたキセキレイも、尾羽を振ることで気配で察知したヘビとの間合いを計っていたのかもしれない。

↓は拙ブログを開設して間もない2005年4月15日に掲載した画像の再処理再掲載。
キセキレイの視線の先には絶体絶命のカゲロウと思しき昆虫が飛んでいる。
連写した次のカットでは捕らえた瞬間が移っているのだが、置きピン撮影*2の悲しさでピントゾーンを外れてしまっていた。

か弱き小鳥の印象を持つセキレイは、その実インセクトイーターなのだ。相手次第では捕食者となる。
キセキレイの口元をよく見ると、このとき既に別の獲物を咥えている。
時季が4月中旬だったことを考えると、巣で待つペアかヒナに捕らえた餌を運んでいたのだろうか。

撮影データ(上):Canon EOS 7D / EF400mmF5.6L USM + 2Xテレコン / 2013年12月 / 多摩川
撮影データ(下):Canon EOS 20D / EF400mmF5.6L USM / 2005年4月 / 丹沢
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*1:剣道での基本的な中段の構えのこと 流派によって正眼・星眼・青眼・清眼と表記が異なる

*2:動きの速い被写体などで、あらかじめ予測した位置にピントを合わせて待機する撮影手法