姫雨燕(ヒメアマツバメ)

アマツバメアマツバメ科】
黒っぽい小鳥が乱舞しているのは、年の瀬も押し迫った多摩川上空。
見上げていると、通りかかった初老の婦人が「越冬ツバメね」と声をかけてきた。
たしかに南国に渡らず国内で越冬するツバメも少数ながらいるのだが、事例のほとんどが東海以西。
頭上を翔るのはツバメに非ず、ヒメアマツバメという別種。

以前は台湾以南とされていたヒメアマツバメの分布だが、1960年代に国内での繁殖が確認され少しずつ生息域を広げている。
真冬の南関東でツバメらしきシルエットを見たのなら本種である可能性が極めて高い。

遠目のシルエットや腰の白い帯などイワツバメ(ツバメ科)に似ているようにも見えるのだが、子細に見れば翼や尾羽の形状がツバメやイワツバメとは全く違うことが分かる。
本種を含むアマツバメの仲間は系統的にカワセミやハチドリなどと同じグループに属し、スズメ目のツバメ・イワツバメとはかけ離れている。いわゆる「他人のそら似」はワシタカとハヤブサ類などにも当てはまる。それぞれ収斂進化の典型と言えそうだ。


余談だが、中華料理に用いる「燕の巣」はアマツバメのグループに属すアナツバメの巣。
周知の如く本当のツバメの巣は泥や藁で出来ている。「食えるものなら喰って見ろ」なのである。

撮影データ :Canon EOS 7D / EF400mmF5.6L USM / 2013年12月 / 多摩川