十日夜(月齢9.737・9.799)

 月の古名が俄然情緒的なのは満月を過ぎた不知夜月(十六夜)から下弦の頃にかけてではなかろうか。立待月に居待月、そして臥待月(寝待月)から更待月と続く古称は日々遅くなっていく月の出の時刻を反映しているが、光源氏もかくやと思わせる妻問婚の趣があり、せつなくも艶めかしい。

 一方で満月までの若い月は地平に現れるのが日中から西空に残照が残る夕方にかけてのこと。古称も三日月や五日月など多くは旧暦に準じたものとなり、いささか即物的だ。旧暦十日にあたる今宵の月も十日夜(とおかんや)と味気ない。

 などと書きながらも梅雨時の月はことさら美しい。夏至から日が浅く、17:43の空は未だに青い。月も空に溶け入りそうだ。

 19時を過ぎても肉眼には青味が残るが、ダイナミックレンジが狭いデジタルカメラが写し取る背景は早々と漆黒になっていた。

撮影データ :Kowa TSN-824M + TSE-9W(50xアイピース) / CASIO EX-Z850 / 横浜市青葉区 / 2012/06/26