虎鶫(トラツグミ)

【スズメ目ツグミ科】
 トラツグミといえばその鳴き声が妖怪「鵺(ヌエ)」の声とされていたエピソード*1がついて廻る。
フィー、フィーと寂しげに聞こえる鳴き声は確かに不気味だし、さえずる状況も夜か昼なお暗い濃霧の時など、人の恐怖を呼び起こすには最適なタイミングだ。古の人々が怯えたのも無理からぬと、テントの中で寝袋にくるまって聴いたただ一度の体験*2からも察するに余りある。
 その妖怪じみた鳴き声も聞きようによっては電子音的で、山中から夜な夜な聞こえるその音にUFO騒ぎが起こったのは70年代のことだったそうだ。
 平安の御代は帝に祟る妖怪となり、高度成長期はUFOと間違われる。林床に紛れひっそりとした暮らしぶりとは裏腹に、古今を問わずお騒がせな鳥だったというわけだ。

 さえずらないこの時季は落ち葉をかき分けるガサガサ音で気づくのだけど、今季の里山では未だお目にかかれずにいる。虎の字を冠するくせにもっぱら臆病な鳥だけに、里山の目立たぬ林床で人知れず暮らしているのかもしれない。
撮影データ :Kowa TSN-824M + TSE-14WE(32xアイピース) / CASIO EX-Z850 / 2011年02月 横浜市
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*1:出典は平家物語源平盛衰記など

*2:四万十川畔で野宿した際、川畔の森から聞こえてきた