ヒコーキの心

ヒコーキの心―フライヤー号からエアバスまで (光人社NF文庫)

ヒコーキの心―フライヤー号からエアバスまで (光人社NF文庫)

収録されているのは1903年ライト兄弟が初飛行を成し遂げたフライヤー号から1980年代までの主要な68機。著者である故佐貫亦男は1941年から1943年までを戦時下のドイツで過ごすという民間の日本人として希有な体験の持ち主だけに、航空機の発達から垣間見える近代史と言ったらいささか大げさかな。
さて、本書で取り上げた中でとりわけ印象深いのがロッキードL-1011トライスター。政財界を揺るがしたロッキード事件で一躍知られると同時にその名に傷を負ってしまった感があるエアバスですが、その乗り味はライバルのダグラスDC-10より好印象でした。事件の渦中に羽田−札幌間のフライトを利用したことを今でもはっきり覚えているけれど、ANAクルーの健気が心に痛かったなぁ。
さらにもう一機種、双発レシプロのデ・ハビランドDH98モスキートも昔見た映画の影響も相まって大好きな飛行機。というか軍用機の中でもとりわけ「無武装で高速なレシプロ偵察機」に惹かれます。同じく本書に登場するキ46三菱100式司令部偵察機もその典型ですが、このカテゴリーに属す機種はその機能ゆえに美しいんです。「我に追いつくグラマン無し」で有名な艦上偵察機、中島C6N1彩雲もその例に漏れないなぁ。

そうそう、故おおば比呂司のイラストも本書の魅力。その航空機の持つ特徴を見事にデフォルメさせたマンガチックなイラストは、写実的なプラモデルの箱絵(小池繁夫氏の作風も好きですが)とは別の魅力を感じます。