小型の鷹と安全保障

ツミ(雀鷹)♀

【タカ目タカ科】

 オオタカハイタカの近縁だけに猛禽としての貫禄は十分。だがその全高は30cmほどに過ぎず見慣れたハトと同じ程度の大きさ。一回り小型なオスに至っては27cmとヒヨドリとほとんど変わらない。

 とはいえ成りは小さくてもタカであることに変わりは無く、一対一ならハシブトガラスでさえ追い払ってしまうファイター。繁殖期には巣から50m半径を絶対防衛圏とすることが知られている。

f:id:Tpong:20191003215619j:plain

 ハシブトやハシボソガラスを天敵とするオナガはツミの巣近傍の林で繁殖することで安全保障としている。スズメなどを狩るツミも脅威だがカラスはそれ以上に厄介なのだろう。虎ならぬツミの威を借りているわけで、なにやら我が国に似ているような気もする。

 ところが如何せん都会ではカラスが増えすぎた。さしものツミでも防ぎきれないようで、オナガの編み出した安全保障システムは効力を失い始めているらしい。某国が台頭し始めたアジア情勢にも似た成り行きに焦燥を覚えるのはトリバカのヒゲボウズだけだろうか。

- 撮影データ:CASIO EX-Z850 / Kowa TSN-824M + TSE-14WE(32x)

ツミ(雀鷹)の過去記事を読む

スズメ今昔物語

スズメ(雀)

【スズメ目スズメ科】

 収穫間際の田圃で10羽ほどのスズメと彼らに倍するカワラヒワの群れを見かけた。今やカワラヒワにさえ数で負けているスズメの凋落に唖然とする。

 そういえば黄金色の田圃でスズメの乱舞を見たのはいつだっただろうか。バックアップ用のハードディスクを遡ること14年、ようやく見つけ2005年のフォルダーから引っ張り出したのがこの画像。

f:id:Tpong:20190923183534j:plain

 スズメが減っているといわれ始めて何年経つだろう。横浜郊外という穀倉地帯とは言い難い土地柄もあるだろうが、その傾向は実感などという言葉では追いつかない。この時期の田圃で防鳥ネットを見かけることも少なくなってきたし、案山子にいたってはコンクール的なイベントでしか見かけない。

 子供のころの当たり前の光景が過去のものとなっていくのは致し方ないことだ。だが日常を取り巻く生物の多様性がゴッソリと失われていく現実はただ事ではない。

 大型化する台風など自然災害の元凶を温暖化に結びつける説が有力だが、被害を被るのは人間だけではない。台風15号は千葉県や伊豆諸島などに大きな災害をもたらせたが、南関東の広範囲でスズメやムクドリが落命したことはあまり報じられていないようだ。家屋の構造が変わったことや藪の減少など、理由は幾つか思い当たる。

 スズメが住めないところには人も暮らせない。そんな当たり前な事に気付くことが先決かもしれない。

スズメの過去記事を読む

インスタ映えは免罪符!?

ノビタキ♂(野鶲)

【スズメ目ヒタキ科】

 2回続けてのノビタキ、今回登場のオスをバードウォッチャーは「のび太」などと親しみを込めて呼んでいる。

f:id:Tpong:20190918213827j:plain

 頭部や目の周辺が黒い鳥は撮り手泣かせだ。よほど光線状態に恵まれないと目が判らなくなってしまう。オナガシジュウカラほどではないにせよノビタキのオスも例外ではない。人間だってサングラスで目を隠してしまうと表情が読み取れないが、鳥にも同じことが言えそうだ。

f:id:Tpong:20190918213836j:plain

 ノビタキは雌雄それぞれが夏と冬で衣替えをするのだが、秋の渡りシーズンの彼らは衣替えを終えて冬羽を纏っている。長年彼らの夏羽を見たいと思っているのだが、どういうわけか春の渡りは足早すぎて出逢えたためしがない。来年初夏は是非とも高原で繁殖に勤しむ彼らと会ってきたいと考えている。

- 撮影データ:Canon IXY210F / Kowa TSN-824M + TSE-14WE(32x)

ノビタキ(野鶲)の過去記事を読む


インスタ映え」のゆくえ

 アサヒカメラ9月号の記事が話題になっている。 

アサヒカメラ 2019年 09 月号 [雑誌]

アサヒカメラ 2019年 09 月号 [雑誌]

 

「風景写真があぶない! レタッチしすぎの罠」という見出しで昨今の不自然なほどレタッチした風景写真を批判した内容なのだが、要は「インスタ映え」に警鐘を鳴らす内容となっている。 

 最近Instagramを始めたヒゲボウズにはとてもタイムリーな内容で、世間の賛否を含め興味深く読んでみた。

 まぁこんな論議は煎じ詰めれば個人の好みで賛成も反対もないのだが、写真を字義通りカメラを用い「事象を写実」する手段と考えるか、絵画やイラストと同じ平面構成として、絵筆やグラフィックソフトと同列またはデータソースとしてカメラを使うかの違いだと思う。

 ただし、後者の場合は一歩間違えると嘘をつくことになってしまう。つまり虚構あるいは表現手段であるとの前提がないと誤解を生むこともあるわけだ。

 ここまで書いて思い至った。「インスタ映え」というワードは多少の虚構は許してくださいという免罪符の機能を持っているのかもしれない。そう考えると少しだけ微笑ましく感じてくるから不思議だ。

 

 ところで、四半世紀ぶりにカメラ雑誌を買った*1。改めて読んでみると写真誌なのかカメラ誌なのかよく分からない。この辺りの不明瞭がどうにも歯がゆいのは歳のせいだろうか。

*1:アサヒカメラや日本カメラなど銀塩フィルム時代からのカメラ雑誌

夏鳥たちのエクソダス

ノビタキ♀(野鶲)

【スズメ目ヒタキ科】

 9月から10月は山や高原で繁殖を終えた夏鳥たちにとって渡りの季節。ツバメは特定の場所に集結して集団で旅立つが、小型のヒタキなどは三々五々といった様子で去って行く。ほとんどは東南アジア方面への渡りだが、その初期の過程では平野部を抜けていくこととなる。

 平野部に住まうバードウォッチャーは俄然色めき立つことになるし、不肖ヒゲボウズもその例外ではいられない。とは言え悲しいかな貧乏暇無しを絵に描いたような日常。たまの休日が所用や悪天候で潰れると膝を抱えたような気分で過ごすこととなる。

f:id:Tpong:20190916202556j:plain

 さて高原で繁殖を終えたノビタキ。平野部の稲刈りが終わったころ、長旅に向けて虫を食みつつ通過していく。日干し稲穂やススキ野原はそうした旅の中継点として都合がよいらしく、そういった彼らの好む条件を理解してしまえば案外見つけ易い鳥種でもある。

f:id:Tpong:20190916202604j:plain

 稲藁干しの為にパイプが組まれていたが、数メートルの間隔は比較的ピントが深いデジスコにとっても離れすぎている。隣のパイプにいるボケボケの鳥はスズメ。

 だがこんなショットでもノビタキがスズメより小ぶりらしいことは見て取れる。Wikipediaで確認したところ、1~2センチほどの差があるようだ。

 夏鳥の南下と渡洋は文字通りエクソダスではあるけれど、来年初夏の帰還も約束されていなければならない。旅の過程で遭遇するであろう台風や猛禽類などを上手くやり過ごし、「約束の地」に戻ってくること念じて止まない。

 

- 撮影データ:CASIO EX-Z850 / Kowa TSN-824M + TSE-14WE(32x)

ノビタキ(野鶲)の過去記事を読む

夜空も一気に秋めく

Harvest Moon 概ね満月(月齢15.044)

 昨日も書いたけど、ジャストの満月は13時台だったので、日本や同じような経度の地域からは少々欠けた状態を拝むことになってしまう。などと思いつつも曇った日中を過ごすうちに満月のことなど忘れてしまっていた。

 20時過ぎにベランダに出てみると、今にも雲間に消えそうな満月が。大慌てで撮ってはみたけれど、大気の状態が悪く輪郭がガタガタ。月面が今ひとつ甘い印象なのはこの状況では仕方が無い。

f:id:Tpong:20190914214936j:plain

 7時間のズレは右上付近の欠け具合に現れている。順光すぎて月面に陰影が乏しい満月は輪郭こそ醍醐味なのだが、考えてみればベストな状況などそうそう得られるものではなかったっけ。

 そういえば英語圏では9月の満月をHarvest Moonと呼ぶそうだ。Harvest(ハーヴェスト)は収穫の意なので文字通り収穫を感謝する呼称なのだろう。スーパームーンだのと言った小洒落た横文字が大好きなメディアが取りあげないのは十五夜と被りすぎるからだろうか。

 

- 撮影データ:Canon PowerShot G9 X Mark II / Kowa TSN-824M + TSE-14WE(32x)

芋名月

名月は雲間を照らす

  朔(新月)から数えて十五番目の夜が満月とは限らない。今宵は満月ひとつ前の小望月。より正確を期すなら明日の13:33頃が満月ピークなので、明晩の月の出あたりが最も丸い月となる。

 何年かぶりで東を昇る名月を撮ろうと朝から仕事車に機材を積んで出かけたが、帰宅時間は雲に閉ざされ空振りとなってしまった。雲間越しながらお月見が可能となったのは20時頃のこと。結局はいつものように自宅ベランダからの撮影。

 なんだか面白みに欠けるけど、月と雲の妙は運次第。それに名月が名月たり得るのは地平の風景と組み合わせてこそとも思える。来月の十三夜(栗名月)で捲土重来といきたいところだ。

f:id:Tpong:20190913215444j:plain

 雲がある限りは遍く照らしはしないけど、未だライフラインの不自由を強いられている台風被災地域には月明かりが届いているのだろうか。ヒゲボウズの職域でも復旧に絡んだ動きが始まった。要請があるかどうかは判らないが、気持ちの準備だけはしておこう。

久々の台風に右往左往

台風15号接近

 家族の送迎にクルマを出そうとしたところ、突然の日照り雨。台風前にキツネのお嬢さんは嫁に行くのかなどと馬鹿なことを考えていたら、一瞬の後にはバケツをひっくり返したような土砂降りとなった。せいぜい10分程のことだったが、台風からの風に押された積乱雲が通過したようだ。

 繁華街を覗いてみると、予報を見たとは思えぬ軽装が目立つ。関東直撃なら久々だと思うのだが、相変わらず首都圏の人々は天象を軽んじている節がある。日没後、隣接区域では避難勧告が出ている中で花火を打ち上げているし、正直訳が分からない。

f:id:Tpong:20190908231506j:plain

 雨の降り始め。面白い光景だったのでiPhoneでパシャリ。この辺りのピントの深さは絶妙だ。と思ったのも束の間、土砂降りとなったのは前述通り。


 今夜は風雨の音が寝物語となりそうだ。願わくは被害のない朝でありますように。


Instagramの野鳥写真

 始めてみて判ったのはポストされた日本の野鳥写真、その過半数カワセミだということ。海外の野鳥写真でもカワセミの仲間は一定以上の人気があるようだが、日本のそれは異常に映る。最初はあまり意識することなく同好の野鳥写真をポストする方々をフォローしていたのだが、Instagramを開く度にいつか見たことがあるようなカワセミカットばかり表示されてしまう。食傷気味とはこのことかもしれない。 

追記(9/9):一種類の鳥を大勢の人が撮れば、場所や時間が違っていても自ずと似通った写真が生まれてしまうという意味で記している。コメント欄でも触れたが、Instagramでのタグ検索、#野鳥 90万件 に対し #カワセミ 16.3万件 カワセミへの異常なほどの偏りを現していると考えられる。個々人ではなく日本の「野鳥写真愛好者」総体の傾向としてカワセミへの偏向ぶりがヒゲボウズの食傷を引き起こしている。